Tuesday, October 14, 2008

チン・シウトン監督「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」を見る

照る日曇る日第175回

中国の怪奇小説集「聊斎志異」を原作とする幻想的な幽霊映画である。青年が死んだはずの美しい女性の幽霊に恋をしたり、幽霊の大王と戦ったりする荒唐無稽なホラームービーであるが、洋の東西を問わず数多くの幽霊映画が製作されるのは、私たちが幽霊の存在を前向きに受け入れているからに違いない。

しかし幽霊なんて本当に実在するのだろうか?

昔から「幽霊の正体見たり枯れ尾花」とかいうて、幽霊現象の大半はそれこそ「非科学的なもの」なのであろう。しかし青山某だの美輪某だのはいざ知らず、私が信頼してやまないある家族などは、「あ、いま誰かが肩の後ろのほうに来ている」などと突然つぶやいたりするので、その誰かが誰であるかはともかく、一種の霊的存在が存在している可能性もおおいにあるのだろう。

我が国の天台本覚思想では「山川草木悉皆成仏」などと唱えて、森羅万象のすべてに仏性が宿ると考えた。漱石の「仏性は白き桔梗にこそあらめ」もこの境地を俳句にしたものだろう。私たちの周囲には祖霊をはじめ無数の霊が取り巻き、私たちはこれらの死者や動植物鉱物少なくとも私はそのことを頭から否定しようとは思わない。

というのも、もしもこの世とあの世からいっさいの精霊が根絶されたならば、私たちの宇宙はどれほど寂しく無味乾燥なものになることだろう。賢明で良識のある人たちが心の底でひそかに信じているように、おそらく霊魂や神は実在しないのだろう。しかし心弱き私たちは、彼らの非在に耐えられない。そこでかつてヴォルテールがいみじくもいうたように、「もしも神がこの世に存在しなかったならば、我々はそれを新たに創り出したに違いない」のである。

健常者も障碍者も年寄りも自己責任で生きていけという倒れずに歩いていかねば 茫洋



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