Tuesday, October 07, 2008

映画「ベン・ハー」を鑑賞する

照る日曇る日第169回

「ベン・ハー」はこの作品だけだと思っていたが、1907年と1925年の2回にわたって映画化されており、ウイリアム・ワイラー監督による1959年製作の本作が3回目だというので驚いた。

とにもかくにもあの血わき肉踊る戦車競走の一大スペクタクルのせいだろう。スピルバーグがスターウオーズで引用したのもこの有名な活劇シーンだった。

しかし副題の「キリストの物語」が示すとおり、この映画はイエス・キリストが本当の主人公で、ベン・ハーやローマの提督や権力闘争やらガレー船による海上決戦やら恋愛はほんの添え物と言わなければならない。敬虔なキリスト教徒による正統派の宗教映画である。

しかし古代や現代や将来の異教徒や無神論者がこの映画を見れば、いったいどうしてユダヤ生まれの一ローカル宗教に、全世界が帰依しなければならないのかと不可解な気持ちになるだろう。映画産業の威力を借り、奇妙な権威を振りかざして無知で無関係な一般大衆に後生大事な唯一神への信仰を押し付けるのは、いかなる大宗教であろうとやめてもらいたいものである。

後年に比較するとワイラーの演出は冴えない。おそらくものすごい経費とエキストラを投じた活劇シーンの処理に忙殺され演出どころではなかったのだろう。ほんらいは主人公はゴルゴダの丘を十字架を背負って登るキリストにかわって背負わなければならないはずだ。

♪東方の博士に落ちたる三つ星 茫洋

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