照る日曇る日第173回
2007年のベルリン国際映画祭やチェコ金獅子賞を獲得したイジー・メンツェル監督の最新作「英国王 給仕人に乾杯!」を試写会で見ました。原作はミラン・クンデラと並ぶチェコ現代文学の巨匠ボフミル・フラバルだそうですが、私はまだ読んだことはありません。
お話は、タイトル通りコックとして戦前戦後を生き抜いたチェコ人ヤンの生涯を悠揚迫らぬ大戦前の欧州映画のテンポで今年70歳になるプラハ生まれの老監督がたどります。
監督の腕の見せ所は、食欲と性欲と金銭欲、すなわち生命欲へのおらかな肯定。人生の終焉に近づいた大富豪たちの酒池肉林の描写のなんと官能的なこと! 美しく若い女性の輝くような肌を舌なめずりしながら舐めるキャメラのため息の出るような素晴らしさ!
ここには古き良き過ぎし時代への手放しの讃歌があります。
そしてヒトラーによるチェコ占領時代がはじまるとともに、主人公の人生が暗転。併呑されたズデーデン地方出身のドイツ女性を愛したヤンは国内の反ナチ多数派とは異なる悩み多き人生を歩むことになるのですが、くわしくは12月シャンテシネのロードショウーでご覧ください。
♪輝くように若く美しい女を俎上に載せいざやナイフとフォークで召しませ 茫洋
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