♪音楽千夜一夜第48回
落ち目の米帝原子力空母によってしかと鎮護されている軍港横須賀を訪ね、まるでカーネギーホールを思わせる素晴らしい音響を誇る「よこすか芸術劇場」にて、はじめて横須賀交響楽団の演奏を聴きました。
最初のチャイコフスキーの「スラブ行進曲」では金管楽器に多少の乱れが生じたり、指揮者のまるでブラバン乗りの単調な演奏方法に少しとまどいましたが、次の「くるみ割り人形」の組曲では、安定した弦のベースに乗ったフルートの素敵な独奏も飛び出し、各パートが徐々に実力を発揮しはじめ、休憩後のメーンの「シエラザード」にいたって、このオーケストラの真面目が炸裂しました。
リムスキー・コルサコフの大傑作であるこの管弦楽曲は、イスラム的なロマンチシズムとスラブ的な哀愁、独創的で忘れ難いメロディと様々な楽器によって次々に繰り広げられる多彩なソロ演奏がとても魅力ですが、私はある時はミストレスによるヴァイオリンが、またある時はオーボエが、ホルンが、ハープが、コントラバスが、トライアングルが、そしてシンバルのとどめの強打が、一針ごとに千夜一夜の幻想的で華麗な音のタピストリーをあでやかに織り上げていくありさまを、人影も少ない5階席のてっぺんで、まざまざとこの目で見ながら堪能することができました。
これを音楽の饗宴といわずになんと呼べばいいのでしょうか。ああ、素晴らしきかなコルサコフ! 素晴らしきかな横須賀交響楽団! そしてくたばれ何回聞いても感動無きルーチン小澤と最初の一音で眠くなるダルなN響!
これだからアマチュア・ローカルオケ通いはやめられません。
♪嫋々と艶なる歌を歌うなりミストレス独奏のシエラザード第3楽章 茫洋
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