照る日曇る日第102回
「陽のあたる場所」はセオドア・ドライサーの原作を51年にジョージ・スティブンスが映画化したもの。田舎育ちの青年がふとしたはずみで隣の女と関係し妊娠させるところから悲劇が始まる。そのまま地味な家庭を築けばよかったろうに、偶然ハイソサエティの美女と恋に落ちたことから青年の心と体は真っ二つに引き裂かれ、若い2人は今生の別れをつげることになる。
世間によくある話だが、身につまされる。「生も暗く、死もまた暗い」というマーラーの「大地の歌」のように暗い物語だが、その悲劇の主人公をモンティが悲壮に演じるので観客はいっそう暗い気持ちになってしまう。そうして彼がついに届かなかったA place in the Sunへの想いが胸を打つ。
純情可憐なヒロイン役を演じるエリザベス・テーラーはきれいでかわいい。後年の熟女の面影なんかみじんも感じさせない。しかしものの本によればこの映画はドライサーの「アメリカの悲劇」の皮相なパロディであり、ヒロインは軽薄で鼻持ちならないハイソの馬鹿娘として描かれているらしいが、私は原作を読んだことがないのでなんともいえない。
44年の英国映画「ガス灯」も負けずに暗い。殺人犯のシャルル・ボワイエの魔手に引っかかって結婚してしまったこれまた純情可憐なイングリッド・バーグマンが、悪い夫に徹底的にいじめられ、あわや心身喪失状態で病院送りになる寸前に正義の味方ジョセフ・コットンが登場してお姫様の危機を救ってくれるという典型的な勧善懲悪の1幕であるが、ここでもバーグマンが後年の堂々たる存在感とは無縁の輝かしい若さと官能美を見せる。
♪1000本の時計を持つ男ジローラモその強欲をひそかに憎む 亡羊
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