♪バガテルop38
名前は探偵犬クロである。さる探偵会社で大切に育てられた現役の探偵犬である。
生まれながらに探偵犬として訓練されているから、尾行や張込みはもちろん、人捜し、また同類項の動物捜しにも大活躍、探偵犬ならではの類い稀な能力を遺憾なく発揮しておる。
かの文豪夏目漱石は大の猫派で、探偵と大金持ちの金田一族を嫌ったそうだが、実はおいらも人様の秘密をあばく探偵稼業でおまんまを頂戴していることについては内心忸怩たるものがある。
しかし少なくともおいらは自分の頭と手足と六感で食べている。そこが2002年の2月に天寿を全うして大往生を遂げたあまでうす家のムクなぞとは一味も二味も違うところだ。あのアホムクなんて朝寝して時々起きて昼寝して時々起きて居眠りばかりしていたからなあ。やはり犬も働かざる犬は食うべからずだワン。
なに?六感がわからない? 「六根清浄お山は晴天」の六根がなまって目・耳・鼻・舌・身・意の六感になったんだワン。おいらはそんじょそこいらの新米マーロウ風情とはわけが違う。犬としての知性も品格も備えているつもりだ。
と、探偵犬クロは空っ風が吹きすさぶ甲州街道でなおもえらそうに自慢するのでした。
♪詩歌については論じるなかれ朝な夕なにただ詠めばいいのだ 亡羊
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