Monday, September 24, 2007

五木寛之著「21世紀仏教への旅ブータン編」を読む

降っても照っても第55回

2500年前にインドで起こった仏教は、中国や朝鮮半島を経由して日本に渡り、インドでヒンズー教と習合した後期大乗仏教が、チベットに入って土着のボン教と習合してチベット密教となり、それがブータンに入ってブータン仏教徒となった。

ブータンでもっとも信奉されているのはニンマ派の開祖で「第二の仏」と称されているグル・リンポチエで、グル・リンポチエは時と場合に応じて釈迦、王、僧侶、歓喜仏、王族、修行僧、憤怒尊など8つの姿に変身して出没するという。チベット密教の影響を強く受けたブータンの仏教が、わが国の仏教とまったく相違するのも当然であろう。

ブータンの人々はけっして蝿や蚊を叩いて殺さない。死して49日後には輪廻転生して次の人?生に生まれ変わることを信じているから、位牌を持たず、先祖供養をせず、インドと同様墓を所有しない。

インドでは遺灰はガンジスなどの川に流すが、ブータンでは手のひらほどのピラミッド型の泥細工にされて山陰や仏塔のたもとに供えられ、歳月とともに風化して土に還っていくそうだが、私はこの考え方にとても共感を覚える。

ブータンといえばGNP(国内総生産)という物神思想を廃し、国民総幸福量GNHで人間の幸福を図ろうとする価値観をなんと28年前の1979年に世界に向かって発信したことで知られる。

この國ではいかにして金儲けするかではなく、いかにして幸せに生き、幸せに死ぬか、ということが最大のテーマなのである。

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