Thursday, March 31, 2011

吉田司著「カラスと髑髏」を読んで

照る日曇る日 第420回 「世界史の闇の扉を開く」という副題がついていますが、これは文字通り東西の世界史を、古代から現代まで牛若丸のように、ここと思えばまたあちらと縦横無地に飛び回って、私たちの立場を再確認しようとするサーカスの空中ブランコ芸人のような超軽業的な試みです。 著者によれば、第1部では天皇制と武士道という2つのイデオロギー怪物を解剖し、第2部では西洋思想の根幹となっているキリスト教と資本主義という2つの物神の怪物と戦うために聖母マリアの処女伝説を解体し、番外編では、フラットな世界を変えるための仮設の冒険を行うといい気宇壮大な思考冒険を敢行しています。 そしてそのドンキホーテ的な試行錯誤は、終章のアメリカ帝国初源の光景を幻視する箇所では急性インポテンツ状態に陥ったようになってあえなく頓挫してしまうのですが、そこに至るまでは、鋭い直観と精力的な博引旁証、力任せの三段論法をマサカリのようにぶんぶん振りまわし、ともかく大団円にまで漕ぎつける。その圧倒的な知の渉猟振りは、ほとんど感動的であるとすら言うてよろしいでしょう。 二〇〇六年九月にアメリカを訪れ、ボストンのハーバード大学の近所の公園で、当時イラクで戦争を続けていたブッシュ大統領を弾劾し、明治三五年頃に本邦で流行った「ワシントン」の歌を絶叫したというこの人を、私は♪てんで恰好いい奴だな、とすらひそかに思っているのです。 天は許さじ 良民の自由を蔑する 虐政を一三州の血は 滾りここに立ちたる ワシントン 死地に乗りゆくあほばか兄弟てんで恰好よく死にたいな 茫洋

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