Sunday, March 20, 2011

松井今朝子著「吉原十二月」を読んで

照る日曇る日 第415回


この本の主役は吉原を代表する廓の主人舞鶴屋庄右衛門。彼が少女時代に発掘し手塩にかけて磨いた二人の花魁に焦点をあてて、彼女たちの紆余曲折に富んだ華麗なる半生をあざやかに描いています。

性格も容貌も対照的な主人公の生き方、彼女たちをとりまく富裕な商人や武家、そして「昼三」(昼間でも三両)といわれる花魁の膨大な収入に依存して生きる妓楼、引手茶屋などの生業の細部が正月に始まり師走に終わる12か月のカレンダーに沿ってきめ細かく描写したこの本は、吉原の光と影をたくましく生き抜いた薄幸の女性たちの人生ドラマであるだけでなく、吉原という江戸時代の巨大性産業のメカニズムを活写したソーシャル小説であるともいえるでしょう。

現在の吉原もトルコなどの性産業の一大拠点ですが、本書を手に取った人は、田沼時代から松平定信時代の吉原に実際に登楼した思いに浸ることができるでしょう。


*謹告「佐々木 健 スティル ライブ展」は、会期が終了しましたが、まだ展示されています。画廊にコンタクトしておでかけください。                  http://www.aoyamahideki.com/         http://www.yomiuri.co.jp/stream/onstream/sasaki.htm

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