Friday, March 11, 2011

ウォルター・ラング監督の「ショウほど素敵な商売はない」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.107

1954年に映画王ザナックが総指揮をとって製作した聖林映画の記念碑的な名作。ドサ回りのボードビリアンのドナヒュー一家が、全篇唄って踊るミュージカル映画の傑作です。

 テーマ音楽はあの「アレクサンダーズ・ラグタイム」。これを5つくらいのアレンジで踊りまくるシーンで、まずあっと言わせます。神父になった長男のゴスペル風宗教ミュージカルの熱唱、次男と娘のダンスの妙技、ドナヒュー夫妻、とりわけエセル・マーマンの素晴らしいボーカルは素晴らしい。超ベテランの年齢に達した彼女が、行方不明になった次男の水兵役の代役で歌って踊るシーンは、見事です。

 最盛期には5人組で全米にその名をとどろかせたドナヒュー一家でしたが、恐慌の到来や子供たちの成長にともなって、次第にてんでバラバラ状態に陥ってくる。

次男の失恋の原因はモンローのせいだ、とゴッドマザーのマーマンおばさんは憎んでいたのですが、さあそこはよく出来たありがちなシナリオで、ラストでマーマンおばさんひとりが心の痛手を押し隠して「「ショウほど素敵な商売はない」を激唱している(泣かせます)と、いつの間にか行方不明の次男も、次男を捜索していた父親も思い出の劇場に勢ぞろいしている!

そして父親が音頭をとって久しぶりに懐かしい「アレクサンダーズ・ラグタイム」を歌って踊るのです(また泣かせます!)が、画面が一転するとそこは20世紀フォクスの巨大スタジオになっていて、何百人ものダンサーをてんこもりにしたピラミッドの頂上からモンローを加えたドナヒュー一家が、あのラグタイムを歌いながら、こちらに向かって降りてくる。涙なしには見られない感動のフィナーレです。

こまかく詮索すれば冗慢な箇所も散見されますが、それも含めて、これは「古き良きアメリカ」という幻想をあざやかに体現した、ハリウッド浅草三文芝居の奇跡的な作品です。

それにしてもモンローの歌と踊りのセクシーなこと。あんな声であんな容姿で迫るミュージカルスターは、絶対にいません。あほばかをよそおう彼女の真価がはじめてわかる作品ともいえるでしょう。

霊苑の線香消えて寒桜 茫洋

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