Friday, March 04, 2011

ヒッチコック監督の「引き裂かれたカーテン」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.105

いつのまにやらあっという間に消失してしまった鉄のカーテンやら東ドイツという社会主義国を巨大な敵として対象化している1966年製の総天然色映画を、その45年後にどんな顔をして眺めれば宜しいのか、といえば、黙って座って眺めていれば、見えざる敵はいずこにも存在し、いずれもひしひしと恐怖に満ち満ちておるのだった。

 いくらソ連や東ドイツやエジプトが滅びても、北朝鮮もイランもイスラエルもロシアも中国も、なんならアメリカも日本だって独裁者が棲むか、鬼が棲むか、天ちゃんが棲むのかは別にして、いっかなおっそろしい国であることは間違いないのだった。

で、映画はいわゆる西側に属する国際的科学者のポール・ニューマンとジュリー・アンドリュースが、いわゆる東側に亡命したふりをして機密を盗み出そうとする素人はらはらどきどきスパイ&恋愛物語であることだけは間違いないだろう。

「サウンド・オブ・ミュージック」の歌うおばさんと「ハスラー」のいなせなお兄さんが物理学の大学教授役なんてミスマッチもいいとこだが、案の定、逃亡の最中に突然出てきたポーランドの男爵夫人役のリラ・ケドローヴァの超絶演技技巧に完全に喰われてしまう。

ったく、ポールとジュリーってド素人だぜ。これじゃあ看板を「引き裂かれたカーテン」から「引き裂かれた三流役者」に描き換えてもらいたいもんだな。


   われが掘り水を与えし池二つおたまじゃくしの卵浮きけり 茫洋

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