Saturday, November 20, 2010

トマス・ピンチョン著「逆光下巻」を読んで

照る日曇る日 第387回

物語の舞台は1893年のデンバーからロンドン、ベネツイア、オステンド、ゲチンゲン、中央アジア、ロサンジェルス、そして地球の成層圏を遠く離れて反地球、あるいはもうひとつの地球に達し、またしても地表に降りたつのは飛行船<不都号>である。

第一次世界大戦を目前に呉越同舟のスパイたちは男は男女、女は女男とつるみにつるんでベネツイアの行き止まりの小路の井戸の上で激しく挑むのは1人の美女と2人の男。合わせて6つの穴がすべて埋められて欲情と快楽のうめき声が運河を滑るゴンドラを揺るがす。

日本人女性数学者釣鐘ウメキの奮闘空しく、不吉なドリア旋法は不協和音を奏で、世界大戦はついに勃発するだろう。しかし世界は終焉し、また再開される。

やがて世界中の少年少女と猫や鳥、魚やネズミ、もっとも地球離れした生命たちをノアの箱舟のように満載した<不都号>は、幻視者だけが見ることができる完全な超双曲面の光り輝く巨大な花の中に辿りつくだろう。ハレルヤ!


あほかそれがどうしたせやったらわいにどないせえちゅうねん 茫洋

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