鎌倉文学館で「川端康成と三島由紀夫展」を見て
秋薔薇が咲く旧前田侯爵邸で「伝統へ、世界へ 川端康成と三島由紀夫展」を見物しました。自裁して果てた文学者たちの遺業を偲ぶ特別展です。
よく知らなかったのですが、この2人は生前非常に仲の良い友人だったらしく、お互いの作品に対してエールを送った書簡や原稿などがたくさん展示してありました。日本古来の文化や伝統に対して深い造詣と関心を懐いていた2人ですからそれも当然と言えば当然でしょう。
三島はその最晩年に「楯の会」のデモンストレーションに立ち会ってくれるよう再三誘ったようですが、さすがに川端はそこまでは足を踏み入れず、肝胆相照らしたご両人もさすがに政治思想においては完全な同化はしなかったようです。しかし三島を喪った川端の衝撃は大きく、1972年4月16日の逗子マリーナでの自死になんらかのつながりがあったかもしれません。(私は小説が書けなくなったことがこの2人の自殺の原因と考えていますが)
生原稿をつらつら眺めていて思ったのは三島の筆跡の素直な美しさと川端の毛筆のデコラティブな醜さ。とりわけ墨痕も生々しく大書された「美しい日本」なる書は5秒と正視できない気色の悪さでした。
美しい日本は心でひそか思うもの「美しい日本」などと大書する恥ずかしさ 茫洋
*「川端康成と三島由紀夫展」は12月12日まで開催中
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