Friday, November 12, 2010

オバマ大統領が来る前に「鎌倉大仏」を見る

茫洋物見遊山記第46回&鎌倉ちょっと不思議な物語第233回

高さ11メートル余の大仏で有名なこの場所は、じつは高徳院という浄土宗のお寺なのですが、開山、開基ともに不明です。その証拠に境内の奥には観月堂という小さなお堂があるのですが、あまり参拝する人はいないようです。
この大仏は、源頼朝の侍女稲多野局が思い立ち、僧浄光が民衆の浄財を募って歴仁元年(1238)に着工し、6年後に完成しましたが宝治元年(1247)大あらしで倒壊し、建長4年(1252)に現在の青銅像が鋳造され、大仏殿に安置された、と「東関紀行」などの物の本には書いてあります。

ところが、その後大仏殿は2度の台風で倒れ、その都度復興されたものの、明応7年(1498)に大津波で流されてからは露座の大仏としておよそ半世紀にわたって雨風にさらされているのです。それでなくとも環境の悪化が懸念される昨今、おそらく数十年度にはみ仏のお肌はぼろぼろに侵害されて現在の端正な容姿とシルエットの美しさを失うに違いありません。

現場を歩いて足元を見ると数多くの巨大な礎石に驚きますが、この立派な大仏殿を一夜にして由比ヶ浜に押し流してしまう大自然の猛威にはもっと驚かされます。大仏を鋳造した仏師は大野五郎右エ門と丹次久友、宋の影響を受けていますが、当時としては最高水準の工法で造られているそうで、だから鎌倉が半壊した関東大震災でも倒れなかったのでしょう。

観月堂の傍、栴檀の樹の下に立つ与謝野晶子の「鎌倉や御仏なれど釈迦牟尼は美男におはす夏木立かな」の歌碑を一瞥したらもうここには見物すべきなにものもありません。広島長崎を訪問すればいいのに、なぜか山口県警が厳重に警備する当地をめざす米国の大統領はいっとき政争を忘れて、少年時代の甘き冷菓の懐旧に浸りたいのでしょうか。

以上例によって「鎌倉の寺小事典」などを参考にさせていただきました。


その夏の日少年はアイスを嘗め嘗め御仏を見上げた 茫洋

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