闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.57
私の大好きな英国の閨秀作家ヴァージニア・ウルフとその作品「ダロウエイ夫人」をモチーフに3つの時代に生きた3人の女性を主人公にした映画である。
1923年のイギリス・リッチモンドで「ダロウエイ夫人」を執筆中のヴァージニア・ウルフ(ニコール・キッドマン)、2001年のニューヨーク・マンハッタンでのクラリッサ(メリル・ストリープ)、1951年のロサンゼルスでのローラ(ジュリアン・ムーア)の3人の女性の1日をいわば三層構造で描いていくのだが、ヴァージニア・ウルフその人はともかく、あとの2人がいったいヴァージニア・ウルフ&「ダロウエイ夫人」とどのような内的連関にあるのかがさっぱり分からない。ほとんどこじつけの世界である。
女優では3人の女優のうちもっとも見事な演技を繰り広げているのはローラ役のジュリアン・ムーアで、メリル・ストリープがこれに次ぐ。ヴァージニアを演じるニコール・キッドマンは最悪。ヴァージニア・ウルフの20代の写真をよく見ろ。彼女ほど美しい女性をどうしてこんな醜い下手くそな女優が演じるのだ。これは作家本人への冒涜だ! おそらくスタッフの誰もヴァージニア・ウルフなど読んでいないのだろう。
冒頭からよく流れない映画的時間をむりやり動かそうと多用されるフィリップ・グラスのミニマル・ミュージックが最悪。もともと下らない音楽だが、こういう俗流情緒的な映像と組み合わせたことによって胸糞の悪い見世物となり下がった。
この映画は精神を深く病むヴァージニアについて描くが、彼女の命を奪った病気に対する洞察と敬意に欠ける低俗なファッション映画である。こんな堕落した低級風俗映画にいかなる賞も与えてはならない。
精神を病める美女ヴァージニアを玩具と弄ぶ商魂醜し 茫洋
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