Friday, November 20, 2009

ウイリアム・ワイラー監督「ローマの休日」を見る

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.19

私のいちばん好きな映画は、やっぱりこれ。「ローマの休日」なのです。

二度と帰らぬ男と女の青春の輝き、ローマのスペイン広場、コロッセオ、サンタンジェロ城、コロンナ宮殿、疾走するヴェスパとフィアット。老獪なウイリアム・ワイラーの巨大な手のひらの上で永遠の恋人たちは恋の輪舞を踊るのです。

しかし何回見ても、涙が出てしまうのはどうしてでしょうか。王国の掟に雁字搦めになったアン王女、(というよりはヘプバーンの)おそらくはたった一度の自由、たった一度の恋、たった一度の(実際は2回するのですが)接吻が、見る人の胸を切なく打つのでしょう。

 とりわけ最後の記者会見のシーンで、訪問した世界の都市でどこがいちばん良かったかと聞かれたアン王女が、どこの都市もそれなりに良かったと答えようとして、「ローマです」と断言するくだりは、はっと胸を突かれます。
そしてアメリカ通信社の記者に扮したグレゴリー・ぺックを万感の思いで見つめた小鹿のような黒い瞳が急速に光彩を閉じて、生涯の恋を断ち切って厳しい王女の顔に戻る瞬間を、ワイラーは鋭くとらえています。

柱が高くそびえた宮殿の間を去っていく男の悲しみは、じつは王女のそれよりもかえって深いのでした。



 ♪ヘプバーンもペックもワイラーも死にたれど「ローマの休日」は永遠に残らむ 茫洋

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