鎌倉ちょっと不思議な物語36回&音楽千夜一夜第8回
十二所の名所はなんといってもここ十二所果樹園だ。もともとはわが十二所村の所有であったが、最近市の史跡保存会が購入し、広大な山全体を手入れしている。
私は昔から果樹園やORCHARDという言葉が好きだったので、鎌倉に引っ越してきてこの果樹園が歩いてしばらくのところにあると知ったときには狂喜してよく子どもたちと出かけたものだ。
そして果樹園の門をくぐるたびに、私の耳には英国の作曲家フレデリック・ディーリアスのオペラ「楽園への道」の序曲がゆっくりと鳴るのだった。
果樹園では梅や栗が栽培され、そのほかにも多くの植物と動物が成育し、山全体をぐるりと周回する散歩道は起伏に富んで四季折々の色彩と景観を心ゆくまで楽しむことができた。初夏には梅、秋には栗が採れ、一般にも安価で販売されている。
私は昨日、今日とこの果樹園を久しぶりに訪れ、手入れのために伐採された梅の枝を捜したのだがとき既に遅し、ほとんど残っていなかった。10日ほど前にボランティアの人たちが作業した帰りに持ち帰ったらしい。残念。
しかしそれにしても園内のいたるところを縦横無尽に跋扈する台湾リスの数の多さには驚く。10年前には1匹もいなかったこの外来種はあれほど多かった様々な固有種の鳥たちを絶滅させ、ミカンの実を食べつくし、大樹の幹を剥いで裸にして枯らし、外部から行政が保存しようとしている自然の楽園を、その内部から食い殺そうとしている。これでは梅や栗の果樹の収穫が危ぶまれる。
もうひとつ問題なのは果樹園にいたるまでの道端にひしめく資材置き場だ。この地は本来は国の史跡なので家屋はもちろん耕作、資材置き場、物置などに使用してはいけないのに、市長が保守系に代わった途端に所有者が土建会社や園芸業者などに勝手に貸し出し、大型トラックやブルドーザーなどが出入りしたり、産業廃棄物が放置されたり、太刀洗川への不法ゴミ投棄や無許可開拓や農耕などが野放図に行われるようになった。
今日もまるで中古自動車修理工場のようなバラックのあちこちで焚き火が行われ、大量のダイオキシンが空中に飛散していた。最近は鎌倉駅東口に「友情」というモニュメントを寄付した彫刻家のI氏の巨大なアトリエが果樹園の入り口に完成し、我ら善男善女の立ち入りをえらそうに禁じている。これも立派な不法建築のひとつであろう。
果樹園の果樹食い尽くしてや台湾リス
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