Sunday, October 22, 2006

こんな夢を見た

こんな夢を見た.


おれはその会社で干されていて、毎日暗い日々を送っていた。

永代橋の近くにあるその会社の「サンプル現売所」(会社の製品見本を社員や株主に安く販売する)に配置転換されていた。

ある日人事課長の竹内から「いまから大株主のお嬢さんと一緒にそちらに向かうからよろしく」という電話があり、まもなく2人がおれが働く狭く汚い展示コーナーに現れた。
そのお嬢さんは宝塚出身の真矢みきに少し似ていたが、生まれたばかりの赤ちゃんを腕に抱いていた。

竹内が「あまでうす君、ちょっとこの児を頼むよ」と言うので、おれは断ろうとしたのだが、竹内が強引に赤ちゃんを押し付けたので、おれは仕方なく慣れない手つきで胸に抱いた。

その男の子はすこぶる元気で、両手両足を振り回し、なんとかおれから逃れようとする。おれは必死で彼をなだめようとしたが、彼は母親を求めてますます狂ったように泣き叫ぶ。

「これはダメだ。おれの手にはおえないよ」と、おれは竹内の助けを求めた。しかし二人の姿はどこにも見当たらない。

「くそお、どこに消えてしまったのか」、とおれはわが身をのろい、地団駄を踏んだが、赤ちゃんは火がついたようにますます猛り狂うばかりだ。

そこでおれは一計を案じておれの右手の人差し指を赤ちゃんの小さな口に入れ、しゃぶらせると、赤ちゃんはすぐに泣きやんだ。

「やれやれ、やっと落ち着いたか。これで安心だ」と言いながら赤ちゃんの顔を眺めたおれは驚いた。おれの腕の中には強大な黒猫がいて、凶悪な眼をらんらんと光らせ、おれの人差し指をピンク色の長いー舌でペロペロなめながら、おれをじっと見つめていたのである。

赤ちゃんはどこへ行ったのだ。こいつは猫というより、黒ヒョウだ。どうしておれは黒ヒョウをだっこしているのだ?

あせり狂ったおれは、その黒猫を一気に放り出そうとしたのだが、まずおれの指を解放するのが順序だと考え直し、右手の人差し指をそろりそろりと彼奴の獰猛な口から抜き出そうとした。

と、その途端、黒猫は彼奴の奥歯に挟んだおれの指にギリギリっと力を込めた。

「い、痛い。お前、おれの指を食いちぎるつもりか?」とおれが尋ねると、「そうさ。そうするつもりさ」と彼奴は答え、またしても上下の奥歯の力を込めてきた。

これはいかん。このままでは食われてしまう。と思うのだが、相手が猛獣ではどうしようもない。指の1本くらいはあきらめよう。そしてこれは誰でもが簡単に経験することではないビッグな椿事だから、この貴重な体験をライブで歌に詠もうと決意した。

そこで右手の人差し指を黒猫にかまれたまま、おれは、

黒猫に指はさまれし門前仲町

と1句詠むと、彼奴は、「お、いいね、いいね。地名を入れ込むとはやるじゃん。ではこうするとどうなるね?」
といいながら、おれの大事な人差し指をガブリと食いちぎったので、激痛が走り、彼奴の口の中にはおびただしい血が流れた。

そこでおれは痛みと衝撃に耐えながら、歯を食いしばって

黒猫に指食いちぎられし秋の午後

と、さらに1句詠みながら、憎っくき彼奴を地面に叩きつけると、彼奴は「うぎゃあ」と叫びながら永代橋方向へ脱兎のごとく逃げていった。

そのときやっと竹内課長が真矢みき風の女と戻ってきた。

女はおれを見、おれの周りをグルグル見回しながら、「あたしの、あたしの赤ちゃんは?」と尋ねるので、おれはこう答えた。

赤ちゃんも猫も消えたり隅田川

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