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Thursday, December 20, 2012

木下恵介監督の「カルメン故郷に帰る」を見て




闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.368

サザエ「浅間山の白い噴煙がたなびく北軽井沢の高原に戻って来たレビューの踊り子高峰秀子が、仲間の小林トシ子とともに繰り広げるコメディ以前の醜悪なドタバタコメディね」

マスオ「演出も脚本も劣悪なら、木下&黛の主題歌も最低、見所は美しい大自然の景観と主役ふたりのチラリ太ももの大胆露出くらいだな」

カツオ「あ、忘れてた。これが1951年松竹製作の日本映画最初の総天然色作品なんだって」


冬の朝ハワイに着きし瓦礫かな 蝶人

Thursday, June 14, 2012

大野和士指揮リヨン国立の「夜鳴きうぐいすウグイス」を視聴して




♪音楽千夜一夜 第265回

ベルギーのモネ劇場を経てリヨンオペラのシェフに就任した大野の実力を遺憾なく発揮したストラビンスキーの2010年エクサンプロバンス音楽祭のオペラ公演ビデオです。

指揮もいいし、曲もいいのだが、ロベール・ルパージュによる演出と人形、影絵が最高で、観客の心を遠い昔の中国の宮廷に飛ばしてしまい、しばらくは現実に戻ってこれなくなったほどの幻想力の猛威を振るうのです。

最近は行きすぎた演出が音楽の良さを台無しにするオペラが多いのですが、こういう見事な演出なら大歓迎です。

それにしても大汗かいて泣いていた佐渡裕なぞより遥かに実力のある大野を招かないベルリン・フィルって、馬鹿じゃないだろうか。

夜鳴きうぐいす:オリガ・ペレチャトコ、料理人:エレナ・セメノヴァ、死神:スヴェトラーナ・シロヴァ、漁師:エドガラス・モントヴィダス、中国皇帝:イリヤ・バニク、侍従:ナビル・スリマン、僧侶:ユーリ・ヴォロビエフ
演奏:リヨン国立歌劇場管弦楽団、合唱団、指揮:大野和士
人形製作:マイケル・カリー、人形振付:マルタン・ジュネスト、影絵製作:フィリップ・ボウ 演出:ロベール・ルパージュ

これよりは皇族もパンは己で稼ぐべしさなきだに平成の民の貢は日々重ければ 蝶人

Thursday, June 07, 2012

フィリップ・ジョルダン指揮パリオペラ座バスチーユの「ペリアスとメリザンド」を視聴して




♪音楽千夜一夜 第261回

何の期待もせずに見物しはじめたビデオだったが、ロバート・ウイルソンの美術と演出が素晴らしい。04年10月15日の大野和士指揮のモネ劇場の「アイーダ」でも、さながらルネ・マグリットの演出でイプセンの演劇を見せられているような不思議な気分になったのだが、ここでは効果的で簡素で抽象的な舞台に登場人物を影人形のように取り扱ったり、能のような所作をさせたり、手首に手話のような振りつけを施したり、創意工夫の限りを尽くして巴里の観衆を楽しませている。

当節の新進気鋭の演出家、例えば昨日紹介したアホ馬鹿クリストフ・ロイのような手合いは、歌劇の本質とは無縁な仕掛けを強引に外部から持ち込んで音楽と歌唱の有機的な流れをずたずたに断ち切って恬として恥じることがない最低野郎だが、この英国紳士はフランス風トリスタンとイゾルデとでも評すべき神秘的な純愛物語に終始優しく寄り添いながらかつてのブーレーズ&ウエールズ国立歌劇場に比肩するような名舞台を鮮やかに立ち上げている。

指揮者のフィリップ・ジョルダンはかつてスイス・ロマンド管のシェフであったアルミン・ジョルダンの息子だが、父親の凡庸さをそっくりそのまま引き継いだような交通整理的凡演を繰り広げており、その演奏はブーレーズはもちろん大野和士の音楽性には到底及ばないが、世界のオペラハウスはこういう痛くも痒くもない衛生無害の連中によって占拠されてゆくのだろう。

バスチーユの劇伴はなんせ本場物ということでまずは無難にこなしているが、第4幕の幕切れなどは指揮者ともどももっと死ぬ気で感情を込めて演奏してほしいものだ。これならわが東フィルのほうがもっとちゃんと仕事をするに違いない。

 ところでこのオペラのキモは国王アルケルの配役だが、フランツ・ヨーゼフ・ゼーリヒはまずまずの出来栄え。ジュヌヴィエーヴ役のアンネ・ソフィー・フォン・オッターが衰えたのは悲しい。
ペレアス:ステファーヌ・デグー、ゴロー:ヴァンサン・ル・テクシエ、アルモンドの国王 アルケル:フランツ・ヨーゼフ・ゼーリヒ、イニョルド:ジュリー・マトヴェ、医師:ジェローム・ヴァルニエ
ゴローの妻 メリザンド:エレナ・ツァラゴワ、ジュヌヴィエーヴ:アンネ・ソフィー・フォン・オッター 
なおこの日のNHKBS3には、パーヴォ・ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマーフィルによるベートーヴェンの6番と7番の交響曲ライヴがグリコのおまけのようについていたが、こーゆー過去の凡演に屋上屋を積み重ねるような演奏はもうたくさんだ。重箱の隅をつつくようなちまちました新解釈を喜んでいるのは演奏しているあんたたち当事者と一部の変態的な暮し苦音楽関係者だけで、一般の普通の聴衆はもううんざりなんだよ。

皇室を飛び出し障碍者のために働きたかったんだってね髭の殿下逝く六十六歳 蝶人

テングチョウとルリシジミ数多生まれた日髭の寛仁殿下蒙じたり 蝶人

Wednesday, June 06, 2012

ティーレマン指揮・ウイーンの「影のない女」を視聴して




♪音楽千夜一夜 第260回

2011年のザルツブルク音楽祭における公演をライヴ収録した映像です。

演出のクリストフ・ロイという奴が天下一品の大馬鹿者で、ホフマンスタールの原作を現代にもってくるのはまあ仕方がない、(けっして良いとは言わない)が、その舞台をこの公演のライヴ録音スタジオに設定するという(演出家本人だけが得意になって大喜びしている)糞アイデアのお陰で、聴衆はもちろんオケも指揮者も手ひどいダメージを喰らっています。

ここで出演者を除外したのは、可もなく不可もない彼らの全員がつねにこの作品のオリジナルスコアを携行していて事あるごとにアンチョコを覗き見できるという利点!?があったからで、本来丸暗記すべきあの長いオペラのセリフや♪をずいぶん省エネできたのではないかと愚考するからです。

リヒアルト・シュトラウスを得意とするドイツ期待の俊英クリスチアン・ティーレマンの指揮はこの音楽の本質を精妙にとらえ、名門オケを完璧にドライヴしながら緩急自在な歌の調べを繰りだしますが、ともかくこのちょいと出ました演出野郎に完全に足を引っ張られ、画面は見ないで音楽だけ聴いていたほうがよっぽどマシというザルツブルク音楽祭史上最悪の公演でした。

その日金星は一匹の黒い天道虫になって向日葵の花の周りをゆっくり歩いていきました 蝶人


Saturday, June 02, 2012

パッパーノ指揮ロイヤルオペラ「トスカ」を視聴して




♪音楽千夜一夜 第259回

レバインが病気降板したNYのメトでは凡庸な指揮者どもの登板と楽員の質の急速な低下で惨憺たるアンサンブルの乱れを呈し、ウイーン国立とミラノスカラ座また低迷久しい現在、アントニオ・パッパーノが指揮するコベントガーデンほど充実した演奏を繰り広げているオペラハウスは、世界でも稀ではないかと思うのだ。

これは両者のコンビがかつてのショルテイ時代を超える高みに到達していることを確信させる素晴らしいトスカの公演ライヴであった。
1幕はヨナス・カウフマンのカバラッドッシとアンジェラ・ゲオルギューのトスカのノリがいまいちだが、ブリン・ターフェルのスカルピアが登場すると場が俄かに引き締まり、画家と高名な歌手の2人を我がものにするとイヤーゴのように歌いあげると凄い喝采が贈られるんだ。

2幕はターフェルの黒い欲情が全開。ろうたけた美女を我がものにせんと迫真の演技で迫るとパッパーノはオケをあおりにあおるので、すべての男性観衆は、ゲオルギューのあの豊かな乳房をギューと鷲掴みにしたいしたいと完全に肉欲のとりことなってしまうのである!

そして突然暗闇にくず折れたゲオルギューが静かに歌い始める「歌に生き、恋に生き」の素晴らしさを何に譬えよう。恐らくかつてカラスが所も同じロイヤルオペラで歌って以来の奇跡的な名演であろう。虫も殺さぬトスカが冷酷無比な暴虐の独裁者をナイフで刺し殺し、「お前は女に殺されるのだ」と絶叫する場面、荘厳な逆光を浴びて退場する幕切れも圧倒的な感銘を与えずにはおかない。

終幕のトスカの投身も鮮やかで、ここでもジョナサン・ケントの演出が冴えわたる。これはNHKの衛星放送で上映された映像だが、間違いなく歴代ビデオの5指に入る名演奏だろうね。

吉田翁死して「名曲のたのしみ」残れり本年中は放送し続けるという 蝶人