Monday, November 07, 2011

リンダ・ハッテンドーフ監督の「ミリキタニの猫」を見て


闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.166

最初はNYのソーホーでうろつく中央アジア系のホームレスの話かと思ったのですが、この段ボールにうずもれた一画で妙な絵を描き続けている薄汚れた爺さんがなんとジミー・ツトム・ミリキタニ(三力谷勉)という純然たる日本人と知って驚きました。

ジミーは一九二〇年にアメリカのサクラメントで生まれました。三歳で郷里の広島に戻ったのですが軍国ニッポンに幻滅しプロの画家を夢見て渡米。しかしおりしも始まった日米戦争でツールレイクの日系人強制収容所に連行され、五年間の苦難の日々が続いたあとも全米各地を放浪します。

そして二〇〇一年NYのソーホーであの運命の911にも相変わらず絵を描いているところを、たまたま若い奇特な女流監督に見出されてこのドキュメンタリー映画ができたというわけです。

興味深いのはこの古風な日本人画家の強烈な個性と魅力的な人柄で、非商業絵画のマスターと自称して雨の日も風の日も絵筆をふるい続けるその年齢を感じさせない情熱、日本を捨てアメリカを選んだのに、市民権をはじめすべてを奪って強制収容所に叩き込んだ強国への不信と怒り、にもかかわらず独力でおのれの運命を切り開こうとする太陽のように明るい生命力が見る者を次第にひきこんでいきます。

はじめ老人が野垂れ死にする悲惨な映画かと心配しながら見ていた私でしたが、次第に理解者やサポーターが現れて環境が変わり、弱肉強食の格差社会の片隅でそれなりに仕合わせな居場所を見出していく、背筋をぴんと伸ばした国際的日本人の生き方に共感を覚えると同時に、アメリカおよびアメリカ人の懐の深さに感嘆せずにはいられませんでした。

コラボとは対ナチ協力者のことであるコラボコラボと連呼するな馬鹿者 蝶人

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