Tuesday, December 07, 2010

原護監督・三谷幸喜原作脚本の「笑の大学」を見る

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.63

監督は誰でもいいが、あくまでも原作と脚本を書いた三谷幸喜の作品である。

時は昭和一五年。太平洋戦争突入寸前の浅草のボードヴィル劇団「笑の大学」の座付き作者稲垣吾朗が、警視庁保安課検閲係の役所広司と繰り広げる脚本検閲をめぐる熱い戦いの物語である。

最初は芝居やお笑いなどとは全く無縁のお堅い軍人だった役所が、はじめてその面白さを知り、次第に魅入られ、しまいには脚本に注文をつけるどころか提案をしたり、役者になって演じたりするように劇的に変身していくさまが、終始警視庁の取調室を舞台に繰り広げられていく。

検閲側の再三再四にわたる修正要求に対して、座付き作者は「無か全か」の二者択一の道を選ばず、あの手この手でゲリラ的に突破していくのだが、権力と表現の自由の対立がとうとうその極点に達し、座付き作者は「絶対に笑いが起こらない笑劇」を書かざるを得なくなる。

しかしちょうどその時、座付き作者に赤紙がやって来て、映画は、人生における笑いの意義にめざめた検閲係が、この稀有の才能を持つ喜劇作家の貴重な生命を案ずる「絶対に死ぬな。無事に帰ってこい!」の絶叫とともに幕を閉じ、観客の涙を誘うのであるが、そういうお決まりのフォーマットよりも、私は三谷幸喜の手になる前代未聞の「絶対に笑いが起こらない笑劇」のシナリオを見聞きしたかったのである。


なにゆえに福田の里より電話しないホームステイの息子よ元気か 茫洋

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