Monday, December 06, 2010

三谷幸喜脚本・監督の「みんなのいえ」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.62

三谷幸喜は題材を見つけるのが非常にうまいが、これもほぼそれに尽きている。恐らくは彼自身の個人的な体験がこのユニークな喜劇を生みだしたのだろう。

一生に3軒作らないと理想的な家はできないとよく言われるが、普通の人はたった1度のチャンスに全知全能全予算をあげて勝負に出る。これが人生最大のドラマでなくてなんだろう。私も30年前の体験を懐かしく振り返ったことだった。

この作品では設計を担当するモダン派の唐沢寿明と建築を請け負った純日本派の大工田中邦衛の激突が最大の見どころ。本当は施主の若い2人がきちんとコントロールしなければいけないのだが、ちょうどいまの菅首相のように玄関のドアの内外の開き方にさえもイニシアチブを発揮できないために、事態は観客の予想通りにますます紛糾していくのである。

しかし道中いろいろあっても、最後は新旧両派がお互いを認め合い、シャンシャンと手打ちして立派な住宅が完成する。当初6畳のはずだった和室が20畳!になってしまった点を除けば、あまりにも当たり前の住宅だったからちょっと拍子抜けだった。

これは喜劇映画なのだから、もっと映画を面白くするために、たとえば最近亡くなった荒川修作の「養老天命反転地」のような、現代人の住まいの本質に迫るような建築物を画面に登場させてほしかったとも思うのである。


ひだりぎっちょなので小便も左に向かって飛んで行く 茫洋

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