闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.36
「情婦」という映画を観ました。これはアガサ・クリスティ原作の探偵ものですが、原作のトリックも凄いが、どちらかというと脚本・監督のビリー・ワイルダーのほうがもっと凄い。
最初にてっきり悪人と思った奴が途中で善人に変わってしまい、そして最後に思いがけないどんでんがえしが待っているという立体的な仕掛けを、この才人はタイロン・パワー、マレーネ・デートリッヒ(驚異の2役!)という超大物俳優を「駆使して」、はじめは処女の如く終わりは脱兎の如く息もつかせずにエンジョイできる極上の娯楽映画に仕上げている。
特筆すべきは老弁護士ウィルフリッド卿を演じるチャールズ・ロートンで、この病み上がりの太っちょ弁護士のいかにもイングランドな人柄の描出や、老看護婦や執事とのユーモラスなやり取りが、殺人事件の奥深い暗闇を照らす鮮やかなコントラストをなしていて見事である。
こういうちょうど2時間の人情サスペンスドラマなら、映画でもテレビでも毎日でも見たいと思うのですが。
邯鄲鳴く桜ケ丘の駅前で旅行帰りの息子待ちおる 茫洋
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