闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.38
ベティ・デイビスとアン・バクスター火花が散るような競演に引きずられてあっという間の140分ですが、アメリカ演劇界の裏表と女の戦いをかくもスリリングに描きつくしたジョセフ・L・マンキーウィッツの脚本と演出が素晴らしい。
しかし恐らく背後でもっと大きな切った張ったの大芝居を演じているのが、20世紀フォックスに君臨した独裁的プロデューサーダリル・F・ザナックであることは、最初のクレジットの巨大さと、映画の中の「ザナックにやっつけられないように」というセリフひとつとっても明らかでしょう。当時のザナックは、マンキーウィッツの脚本を書き直したり、ジョン・フォードがせっせとつないだ映像をみずから切り刻んで平気で大幅に改編したりしていたのですから。
それにしても「8月の鯨」でリリアン・ギッシュと枯淡の演技を見せたベティ・デイビスの女に嫉妬丸出しの鬼気迫る怪演と、大女優役のベティ・デイビスを喰い物にしてのし上がっていくアン・バクスターの初めは処女の如く、終わりは脱兎の如き変身ぶりは見ごたえ十分です。
映画はそれだけでとどまらず、最後にかつてのアン・バクスターそっくりの女優の卵が出現して、はやくもその地位を伺うというきわめて印象的なシーンで終わるのですが、このときミルトン・クラスナーのキャメラは異常なほどの冴えを見せ、このワンショットだけでもこの映画は一見の価値があるでしょう。
もちろん私の御贔屓のマルリンモンローちゃんも、とぼけた味わいで友情出演していますが、しかしなんといっても「イヴの総て」は、「ザナックの総て」というべき映画だと私は思います。
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