夏は逝く
ある晴れた日に 第78回
沖合からやって来た土用波が百千のヨットを次々に倒すと、海面すれすれに浮上してきたゴンズイが歓声を上げた。
伊豆大島の上空でゼフィルスが裳裾をからげたので、大仏を見下ろしていた雷神が小太鼓を連打した。
コートジボアールからやって来た青年の双眼がビキニからはみだした巨乳にくぎ付けになったので、由比ヶ浜監視所のてっぺんの烏が阿呆阿呆と叫んだ。
今年16回目の海水浴を終えた少年は、お父さん、浮輪をつぶしてくださいな、とつぶやいて萎れたハスの葉に顔をうずめた。
ちょうどその頃、
66年前に撃沈されたはずの駆逐艦は、相模湾の海底からゆっくり身を起こそうとしていた。
君とゆく海水浴は16回今年の夏もやがて逝くめり 茫洋
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