闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.33
1975年製作の大映映画を、夏の夜長を居眠りしながら見るともなく眺めておりました。
まずは九頭竜ダム落札事件をモデルに、保守政党の総裁選挙に端を発した汚職事件を描いた石川達三の原作を見事に劇化した田坂啓の脚本がよくできています。
ために山本の演出の切れ味が冴えわたる。池田、佐藤政権時代の自民党政治の内幕が、まるで赤塚不二夫の漫画のように面白可笑しく描かれていてあきさせないのです。
そして腐敗堕落した政財界とマスコミ、土建会社の面々を演じる役者たちのなんと絢爛豪華なことよ。
とくに凄いのは前歯をむき出しにしてあほばか面を画面いっぱいに全開する希代の詐欺師森脇将光を演じる宇野重吉その人です。マッチポンプ代議士田中彰治役の三国連太郎を凌ぐ存在感をみなぎらせて秀逸。冷徹な官房長官黒金泰美役の仲代達矢を完全に喰ってしまっている。とりわけ田中彰治が森脇を接待するキャバレーの色と欲のシーンはこの70年代を代表する映画のハイライトといえるでしょう。
ぎらぎらと野心と欲望をむき出しにする怪しき男どもが暗黒界にうごめくとき、男優陣の陰に隠れている池田首相夫人の京マチ子や森脇の女中村玉緒、大塚道子、長谷川待子、鹿島建設が黒金に提供した安田道代、夏純子などの女優陣があたかも金環触の外輪のように妖しく輝く。
これは政治と汚職に材を借りた男と女の真夏の夜の供宴映画ではないでしょうか。
超高層の億ションペントハウスに住むという男の自慢を白々と聞く 茫洋
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