bowyow megalomania theater vol.1
丘の上にはとても大きなモミジの木が冬も間近だというのに深紅の葉を広げて、沈みゆく夕陽を全身に浴びながら黄金色の双頭の鷲のように輝いておりました。
この高さ10メートル、直径2メートル、樹齢300年になんなんとする巨木の下に、傾きかかった廃屋がありました。風雨に打たれた茅葺の屋根の下には板張りの六畳間がひとつ。これはいったい何十年、いや何百年前に建てられた小屋なのでしょうか?
今は人の住む気配もなくしんと静まり返っています。そうして何千何万という小さなベニシジミの形をしたモミジの葉っぱが、この不思議な家の上に音もなくハラハラ、ハラハラと紅い小雪のように降りしきっているのでした。
古い家の前には、これまたいつの時代に建てられたか分からない小さな苔むした墓標が2つ立っていました。
文枝と洋子は早速小川の水を園から持ってきた水筒に入れたのに小菊をいっぱい挿してお墓の前に置き、深く一礼しました。
するとその時、遠くの方でどこかのお寺の鐘がゴオーン、ゴオーンと幽かに鳴り響いたのでした。
その晩僕たちはこの人里離れた山奥のこわれかけたあばらやに寝泊まりすることにしました。
いつなにがおこるかわからぬよのなかやなにとぞぶじにいきおおせたし 茫洋
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