Sunday, February 01, 2009

オッフェンバックのオペレッタ「ジェロルスタン大公妃殿下」を視聴して

♪音楽千夜一夜第56回

オッフェンバックのオペレッタ「ジェロルスタン大公妃殿下」を衛星放送で観劇しました。これはパリのシャトレ座における04年12月のライブです。

シャトレ座といえば昔パリ管の指揮者で売り出し中だった、まだ若手か中堅時代のダニエル・バレンボイムが「ドンジョバンニ」を振った夜に、聴衆の見解がそれこそ賛否両論真っ二つに割れて、ブラボーとブーの2つの叫びが5分間も続いたことが忘れられません。その間、当のバレンボイムが胸に手を当てたまま審判に身をゆだねている姿が印象的でした。

何事につけても良い悪いの意思表示がはっきりしているのがパリの民衆の特徴なのですが、この日の演奏に対してはきわめてノリが悪く、ようやく拍手がわいたのは表題役を演じるフェリシテーィ・ロットの最初のアリアのときでした。浅草オペラなどで一世を風靡したブン大将をフランソア・ルルーが好演していますが、やはりなんといってもベテラン姥桜ロット様の貫禄の歌唱と演技の勝利でしょう。

永井荷風ゆかりのこの浅草オペラでまたしても思い出すのは、田谷力三がうたっていた
スッぺの喜歌劇「ボッカチオ」の有名なアリア「ベアトリ姐ちゃんまだねんねかい」や「恋はやさし百合の花よ」です。かつての私の上司は、これを宴会であざやかに歌いこなして万座の喝采を博したのでしたがいまどきのリーマンにこのように奥の深い芸当ができるでしょうか?

マルク・ミンコフスキー指揮のグルノーブル・ルーブル宮音楽隊は、ブンチャッチャ、ブンチャッチャの力演で、かつてリュリが指揮杖でおのれの足を刺し貫いたさまをしのばせましたが、やはり音楽は2拍子からはじまって3拍子、4拍子へと進化していったのではあるまいかと、まるで阿呆のように思ったことでした。

♪元わが上司N氏の名歌唱「ベアトリ姐ちゃんまだねんねかい」をもいちど聴きたし
茫洋

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