照る日曇る日第227回
小学館の日本の歴史もそろそろ大詰めに近づいた。今回は19世紀の江戸時代を取り扱っている。
本書ではまず西欧、ロシア、米国などが日本に押し寄せてくる環太平洋の時代のなかにあって、露西亜との北方領土画定のせめぎあい、大黒屋光太夫や高田屋嘉兵衛などの漂流民や人質外交戦においても、我が国がそれなりに「帝国」としての存在感を示して列強諸国の圧力に耐えたことが指摘される。
また江戸時代がけっして幕府の専制独裁の世の中ではなく、ルールにのっとった建策はかなりの程度まで受け入れられ採用された民主的?なシステムをもっていたこと、またこの潮流が幕末のペリー来航の際のオープンな開国論議に引き継がれていたこと。
庶民の正義の味方として高く評価されている大塩平八郎が、その裏面では水戸藩に対して特別の好意を示して米価の引き上げにつながるような便宜を図っていること、天保の改革で風俗を取り締まって倹約を断行した老中水野忠邦はもっと再評価されるべきであること。
さらにはそもそも百姓もある時期までは一本差しなら武装が認められており、高杉晋作の奇兵隊以前に、江戸市中に散在した道場主やメンバーの大半、近藤勇の新撰組やその前身の浪士組のメンバーの大半が武士ではなく、もっぱら百姓や神主などの平民であったこと。そしてその歴史と実績が幕末に物をいい、かれら「草莽の庶民剣士」こそが明治維新の立役者であったことなどが、きわめて実証的に語られるのである。
香ばしき麹の匂いに包まれて年九袋の味噌を仕込めり 茫洋
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