ふあっちょん幻論第31回
日本におけるスーツ受容の歴史の特徴とは、①前回の明治天皇家の事例でみたように、
あくまでも「上」からの指令で着せられたこと。②軍服の機能性をウリに官吏の権威を振りかざして大衆化していったこと。③従ってなかなかTPOまで手が回らなかった。ことなどが挙げられます。
最後の点については戦後石津謙介氏が提唱するトラッドが登場するまでわが国の男どもには身につかなかったという意見があるくらいですが、それほど長いメンズ暗黒時代が続いたわけではありませぬ。
たとえばここで紹介しようと思う荷風散人なぞは鴎外、漱石などほぼ同時代の文学者に比べても抜群にお洒落でありました。私はメンズモードの初期の規範はこのダンディによてはじめて確立されたのではないかとひそかに考えております。
前置きはこれくらいにして次回から永井荷風のファッション論を紹介してまいりませう。もっともその材料はすべて1916年(大正5年)に発表された彼の「洋服論」に基づいておりますので念のため。
明日持っていく物は今晩中に揃えておきなさいなんて母も言わなかった 茫洋
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