♪音楽千夜一夜第40回
この夏もロンドン恒例の音楽祭プロムス2008が始まった。第114回目のヘンリーウッド・プロムナードコンサートの開幕である。
これからおよそ2ヶ月間毎日毎晩何千何百というコンサートをライブ中継で聞くことができると思うと、なにがなしにうれしくなる。
初日はおなじみロイヤルアルバートホールからの中継で、ルイジ・ビエロフラーベック指揮BBC響によるリヒアルト・シュトラウスの「4つの最後の歌」(クリスチン・ブリュアー独唱)、モーツアルトの「オーボエ協奏曲」(ニコラス・ダニエル独奏)などを聴いたが、オーボエがよい音を出していた。指揮者は昔から三流の人だが、三流だってべつに悪くはない。私もようやくそういう悟りの境地に達しました。
しかし何千マイルを隔てて聴くこの巨大ホールの音の素晴らしさは、有楽町駅前や渋谷区神南の最悪音響犬小屋空間の比ではない。なによりも音楽を愛するロンドン市民の心の鼓動に触れるよろこびがある。
そのほかのプログラムは、これまでにピエール・ローラン・エマールの素敵なシューマンのピアノ曲やチョンミュンフン指揮ラジオフランス響によるサンサンスの交響曲オルガン付きなどを聴いたが今年もなかなか楽しめそうだ。
ともかくソロもオケも世界各国から古参、新進気鋭のめぼしいものがどんどんやってくるので連日のプログラムから眼を離せない。内田光子とアルゲリッチのピアノはいつも素晴らしいが、去年は長年にわたって低迷を続けていたポリーニが久しぶりに光彩陸離たる演奏をやってのけたのでちと驚いた。どっこいミラノの孤高の天才はしぶとく生き延びていた。どうか今年も世界一うるさいロンドンの聴衆と惰眠をむさぼる小生のロバの耳を驚かせてほしいものだ。
なおプロムスにはクラシックだけでなく詩の朗読プログラムもたくさんある。
♪翡翠飛びニイニイ鳴き今日からは私の夏だ 茫洋
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