Tuesday, July 17, 2007

ある丹波の老人の話(37)

「第6話弟の更正 第5回」

弟はそれから大阪へ戻り、親戚を頼って今度はお家芸の下駄屋の夜店を出し、少し儲かったんで手馴れたメリヤス雑貨に変わりました。

ここで嫁をもらったんで、ようやく今度はかたぎになるかと思ったら、またまた性懲りもなく道楽をはじめ、商売もめちゃくちゃになり、手形の不渡りなどでだいぶ良くないこともやったとみえて、警察から私のうちへ弟のことを尋ねてくるようになり、ずいぶん心配させられたもんでした。

ちょうどその時、父の病が篤く、電報で知らせたけれどなかなか帰ってこない。ようやく帰ってきて臨終には間にあったけれど、これがまた隠岐から帰ってきたときの父同様、着の身着のままのみすぼらしい姿でした。

あとで聞くと帰ろうにも旅費の工面がつかず、河内のほうまで行って友達に帯を借り、これを質に入れて旅費を作って帰ってきたということでした。

葬式のときは幸い私が夏と冬のモーニングをつくっていたので、夏の分を弟に着せ、ちょうど4月の花見時分やったのでどうにかカッコウがついたんでした。

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