あなたと私のアホリズム その10
中島義道が説くように、日本人はそれほど美しいものを愛好しているわけではない。むしろその逆だ。
我々は、新宿や秋葉原や渋谷センター街の現代的な光景をことのほか愛している。そしてそこは醜悪でグロテスクな街だ。
三茶やシモキタや有楽町のガード下や歌舞伎町や新橋など大中少のきのおけない大衆的な雑踏を愛している。そしてそこは醜悪でグロテスクな街だ。
日本人が桂離宮や銀閣寺や高雅な北山文化を愛していないことはないのだけれど、それはよそ向きの顔であって、日常生活の中ではお気楽で猥雑で無政府的でブッチャケで混沌としたアジア的な無秩序を好むのだ。アジアの片隅の村祭りをこよなく愛しているのだ。
あるいはこうもいえる。
我々は自宅の中では西洋かぶれのおしゃれなデザイン美学を愛好しているが、一歩外に出れば建築や調度や雑貨の美しさなどもうどうでも好いのだ。
「町並みの美学」なぞ、犬にでも食われろだ。
道路も、街路も、電柱も、電線も、駅も、自転車置き場も、ゴミ捨て場同然の醜さであっても、どこかの国のアホバカ首相のように「これが日本だ、美しい祖国だ! ワンワン」と、シッポを振って喜んでいるのである。
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