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Tuesday, December 25, 2012

ビクトル・エリセ監督の「エル・スール」を見て




闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.370

娘と父と母。フランコ独裁体制は去ったが、精神的には「ミツバチのささやき」の孤独な魂の世界をそのまま引きずっている映画です。

イレーネ・リオスという女優に心を奪われた父は愛する妻子を投げ捨ててとうとう自裁して果てるのだが、その心の奥底は観客には杳として知れないのであんまり同情はできない。

そうかい、そんなに惚れていたのならもっと若い時に一緒になってれば良かったじゃないか。こんなに可愛い娘がいるのに今頃になってどうして死んでしまうんだ。勝手にしろ、というような醒めた気持ちになってしまう。

ようやく、と言ってはなんだが、ようやく父親がいなくなった暗い屋敷から15歳の少女が南に向かって旅立つところで映画は突然終わるが、これも観客に失礼ではなかろうか。まだ話は半分しか終わっていないのに勝手に打ち切ってもらっては困るのである。

わたくし的には、さびしんぼうによる独りよがりな映画でした。


孤老死す皇帝ダリア植え終えて 蝶人

Monday, December 24, 2012

ビクトル・エリセ監督の「ミツバチのささやき」を見て




闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.369

怪物フランケンシュタインは果たしていとけない少女を殺めたのだろうか? スペインの寒村にやってきた1931年製作の映画でそんな疑問を懐いた少女アナの心の旅路を辿る映画である。

みつばちの栽培と研究に朝まで没頭する高齢の父親、どこかの誰かに向かって手紙を書き続ける若い妻。そして2人の間に生まれた幼い2人の娘が同じ館に暮らしているが、夫婦の間はバラバラ。毎晩隣同士のベッドで眠る姉のイザベルと妹のアナは仲良しではあるが所詮はあかの他人なのだ。

こういう家族のありようがフランコ独裁時代のスペインを象徴しているとまことしやかに説く連中もいるが、そもそも人間は孤独な存在なのだ。

アナは怪物フランケンシュタインと巡り合い、「信じることさえできれば誰とでもお友達になれるのよ」と呟くが、その純真な心が果たしてこのモンスターに通じるのであろうか?
大きな謎を残したまま映画は突然終わってしまう。

バーキンの頬柔らかきクリスマス 蝶人


Friday, October 26, 2012

シドニー・ルメット監督の「Q&A」を見て




闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.334


新米地方検事補のティモシー・ハットンの悪戦苦闘物語でがす。

悪役の上司のみならずその上司に使役されている悪辣なブルドック警官ニック・ノルティや同僚、恋人と恋仇に振り回され、挙句に応援を約束していた検察の上層部にまで裏切られて身も世も恨むという可哀想なお話です。タイトルの「Q&A」は検察の尋問調書のことだという。

それにしてもニック・ノルティの存在感は圧倒的。善人役をやるとあれほど可愛らしいのに、ここでは物凄い汚れ役の悪党ぶりを見せつける。

社会派のルメットとしてさんざん痛めつけられたハットン選手の捲土重来を期しての続編を考えていたと思われるが、その夢はついに叶わなかったようだ。

脳内にざわめく嵐御しかねてお父さん大嫌いと喚きだしおり 蝶人

Sunday, July 08, 2012

根岸吉太郎監督の「ウホッホ探検隊」を見て



闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.274

この監督で私がいたく感じいったのは「ひとひらの雪」(津川雅彦の名演!)だったが、出来不出来もある人で、「探偵物語」とかこの作品ではその実力はほとんど発揮されていないといえよう。
 
 そもそも田中邦衛が藤真利子と浮気したり、十朱幸代が主婦兼ライター役という配役自体に問題がある。ゆいいつよい味を出していたのは野球選手役の柴田恭平くらいで私が好きな斎藤慶子ともっと好きな速水典子はいまイチ、いまサンだった。森田芳光の脚本も冴えない。

 干刈あがたはもう少し生きて、いろんな小説を書いて欲しかった。


一人しか子供産ませぬその国に自由と人権あるはずはなし 蝶人