照る日曇る日 第357回
第1巻がこの間出たと思ったら、もう第3巻でちょっと民主党の小沢を思わせる政敵右大臣の愛娘朧月夜の尚侍をまたしてもやってしまった源氏は、そりゃあんまりだ、当然の酬いだという訳で哀れ須磨に流されてしまいますが自業自得身から出た錆びの都落ちをおいおい泣いたり侘びたりするうちにまたしても都合よく明石の君を発見して奥方の紫の上を気にはするものの結局この鄙には稀な美女もおのがものにして玉のような女児をあげるのですがこういういいかげんうんざりするようなワンパターン的色好みすけこまし譚も一種貴種流離譚のようなお伽噺もすべて超インテリオバハン紫式部の空想にすぎず一世一代の色男を自分の都合のいいように手のひらの上でポンポコリンさせて色即是空させているだけのことじゃねえかと思えばなんだか物語の操り人のその怪しい手つきがほのみえてような気がしていささか興ざめにもなるのですがとはいえ平安時代は藤原道長が位人臣を極めこの世をばわが世とぞ思う望月の欠けたることもなしと思えたご時世にあって藤原氏以外の貴族たちは立身出世の道を断たれて書画骨董文芸淫美女色の脇道に深入りするしか生きるすべがなかった時代ですからいくら道長から寝ようと誘われ自作の第一読者を自任されていたとしても所詮式部は藤原一族のはしくれですらない彼女はアンチ藤原氏一同を代表して彼らの見果てぬ夢である幻想の源氏の御代を描いてその世界初世界最大最高の物語のあちらこちらにおいて道長一派を皇室を危うくする権謀術数家や権力にこびへつらう滑稽な道化師女の性を利用し踏みつけにしてどこまでも私利私欲を追い求めようとする小市民として点描することによってせめてもの気晴らし口散じをすることだけが関の山だったといえばいえるのでしょうが結果的にその小さな嫌がらせないしささやかな政治的報復行為がこの史上空前の大ロマンの多種多様な副主人公たちの光彩陸離たる大活躍につながって物語の細部を異常なまでに充実させあまつさえそこに読者の視線が集中するという思いがけない結果を生んだために恐らくは致命的欠陥になりかねなかった主人公光源氏のあほばかウドの大木的キャラの肥大化および下半身爆弾常時突貫小僧的単細胞肉体性と諸行無常的空虚感の後景化に見事に成功したといえそうです。
♪藤原の摂関政治にあぶれたる貴族が励みしセックスと歌 茫洋
No comments:
Post a Comment