闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.30
原題のAll That Heaven Allows(邦題「天はすべて許し給う」という言い方がAll ThatJazzとか私の造語であるAll That Fashionに似ていて恰好が良いのでついつい視聴してしまいました。1955年製作のアメリカ映画です。
ロック・ハドソン扮する若者と母親くらいの年齢のジェーン・ワイマンのラブストーリーを見ました。夫に死に別れて大学生の息子と高校生の娘を持つワイマンはあんまり美人とはいえないけれど、どこか田中絹代を思わせるろうたけた風情とかわいらしさもあって悪くありません。
内心から湧き出る恋情もだしがたくとうとう若いハドソンと結ばれてしまいますが、いざ結婚となると世間体と子供が気になってなかなか踏み切れずとうとう身を引く決心をするのですが、せっかく大きな犠牲を払ったというのに子供たちは自分勝手な道に走ってしまう。取り残された女はやはり愛する人の元へといっさんに駆けつけるというめでたしめでたしの結末です。
ジェーン・ワイマンはそれなりに苦悩に引き裂かれた年上の女性の表情を懸命に演技しようとしているのですが一方のロック・ハドソンは相変わらずの大根役者振りをあからさまにしていて、ダグラス・サーク監督は彼にあんまり演技をさせまいと懸命なのですがどうしようもないというところが見どころのかつてはよくあった典型的なB級ハリウッド映画です。
男と女の恋が次第に燃え盛ろうとすると必ずブラームスのハ短調交響曲の第4楽章のコーダが遠く近くで鳴り響いて、文字通りクラシカルに恋の予感という奴をまきちらしているのが耳に残りました。
亡き父の鞄の底に眠りしは肩書のない一枚の名刺 茫洋
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