Friday, July 10, 2009

都のオリンピック招致広告について

茫洋広告戯評第9回


先日学友諸君と東京建築観光ツアーで新宿都庁へ行きましたら、原っぱで寝そべっている小学生たちの楽しそうな電光ポスターが掲示してありました。

このビジュアルをバックに、左には「日本だからできる。あたらしいオリンピック!」、右側には「元気な子どもたちを育てる校庭の芝生化! 緑あふれるオリンピックの開催を通じて環境の大切さを世界に伝えよう!」という2本のキャッチフレーズが並んでいます。

同様のものは西口広場にもありますが、この広告は、環境を大なり小なり傷つけるに決まっているにもかかわらず、環境問題とオリンピックを結びつけ、「校庭の芝生化=緑あふれるオリンピック」と短絡化し、東京の環境への取り組みを見てもらうためにオリンピックをやるのだと強弁しているようです。

しかし校庭の芝生は、以前から児童の健康のために植えているのであって、別に2016年に競技を見に来る観光客のために植えているわけではありません。文教とスポーツというもともと無関係な2つの主題をむりやり結びつけたところに、この広告の政治的な意図が感じられます。

確か別の場所に「23区の小学校の校庭を芝生にします」というキャッチだけで構成されている広告もありましたので、これは私の想像ですが、「オリンピックを東京でやりましょう」のほうはあとから付け加えられたものではないかという気がします。

もしそうだとすれば、校庭の芝生を喜んでいる小学生の笑顔を、東京オリンピック歓迎の笑顔に勝手にすり替えてしまう。そんな前代未聞の過ちを、知事と東京都は犯していることになるでしょう。

フランスや中国や我が国の女性や老人を蔑視し、お道楽で始めた新銀行東京が大赤字を出して都民にとんでもない迷惑をかけている石原知事が、おのれの死土産として始めたのが2016年の夏季オリンピック招致運動です。

彼はこのまったく個人的な妄執に狂奔することによって新銀行破たんの政治責任の追及から逃れようと画策しているようですね。

ロンドンの後のオリンピックを東京で開催することについては、新銀行東京の赤字に追い打ちをかける財政負担となり、さらに都民の懐を痛めるだけでなく、新しい環境破壊の要因になるとして、心ある都民のみならず多くの国民が反対しています。

すでに東京は一度オリンピックをやっていますし、前回は同じアジアの北京で開催したばかりです。
ここはそれこそグローバルな視点に立って、まだ一度も世紀の祭典を体験したことのない南アメリカ代表のリオデジャネイロ(ブラジル)に譲るのが成熟した国民と政治家がとるべき大人の態度なのに、俺が俺がとまるで餓鬼大将のようにでしゃばり、あまつさえほんらいならば己が推薦するべき福岡などの国内の開催希望までたたきつぶしてしまうとは、まことに夜郎自大な振る舞いではないでしょうか。


♪墓場の中まで五輪塔持ちゆく男あり 茫洋

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