Monday, July 06, 2009

谷川俊太郎著「トロムソコラージュ」を読んで

照る日曇る日第270回&♪ある晴れた日に第60回

わたしがこのないだこの人の詩が下手くそであるという歌を詠んだのは
月いちで掲載される朝日新聞の短いものを読んでおそろしく手抜きである
あんなものなら誰でも書けると思ったからだが、
この「トロムソコラージュ」を先に読んでいれば
あんな馬鹿な短歌は作らなかったし作れなかった。

それにしてもトロムソコラージュってなんだ。ソロムコなら代打満塁ホームランだが
ノルウエーの森の向こうを張って、訳の分らぬ題名をみだりにつけるな。
しかしわたしはいちど書いたものを取り消すのは嫌だし沽券に係わるとも
感じているのであえて白紙撤回するのはやめておこう。
拍手喝采 博士は風邪だ うちのムクちゃん墓の中

その詩人は若き日の面影を濃密に湛えながらも
新宿地下鉄丸の内線のプラットホームを歩いていた。
どす黒い疲労と深い悲しみが彼の全身を覆い尽くしたが、
窪んだ眼窩の奥底で爛々と光る両の目は依然として20億光年の孤独を見つめていた。
思いのほか背が低かったが、巷を低く見ようと背筋を伸ばして歩いていた。

こんな可哀そうな老人を死んでしまえと罵ったねじめ正一は呪われてあれ!
怒った詩人は棺桶に突っ込んでいた左足をやっとこさっとこ引っ張り上げて
与えられたお題「ラジオ」による見事な即興詩をけつの穴からひりだして
傲慢なる前チャンピオンをかりそめの王座から引きずり落としたのだった。
ねじめ けじめ お前のあそこは くそだらけ

そして今度は竜虎の勢いで、
ロシア、ドイツ、モロッコ、イングランド、ウエールズ、スコットランドを次々に制覇し、赫々たる感情旅行の成果を長編詩集におさめてしまう。
土地の精霊が宿る心霊写真と共に。
いいないいな いい歳こいて いい娘を抱いて

ハレルヤ! 
永久不滅の詩のチャンピオン。
不老不死の言葉の錬金術師。
もはや勃起しない陰茎で女人を犯す。
立ち止まらないよ、君は。

ハレルヤ! 
死してはまた不死鳥のように蘇る気高き詩魂。
超低空飛行の後期浪漫主義者。
人っ子ひとりいない場所を自分の心の中につくる
立ち止まらないよ、君は。

♪尻の穴に指突っ込めば気持ちいいぞといいし井口君アルジェで何しているか 茫洋

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