Tuesday, June 03, 2008

イヴ・サンローランとフランス革命

ふあっちょん幻論第21回

イヴ・サンローランが脳腫瘍で死んだ。まだ71歳とは知らなかった。若すぎる死といってもいいだろう。

20代でディオールの後継者となったサンローランは、1966年にサンローラン・リヴ・ゴーシュを設立して「マリンルック」や官能的な夜のパンツ「スモーキング」を発表した。
サファリスーツやモンドリアンルックやプレタポルテブームを先導した功績も大であるが、私がみるところ、もっとも偉大な業績は「シティパンツ」の創造であろう。

サンローランが、女性が街で着られるパンツスーツ「シティパンツ」を発表したのは1967年であった。これはウールジャージー素材によるチュニック丈ジャケットとパンツの組み合わせで、史上初めて“働く女のスーツ”を作ったシャネルが「サンローランこそは私の後継者」と呼んだ逸話にふさわしい革命的なルックスであった。
シャネルのスカートをサンローランはパンツに取替え、それまで男性が独占していたパンツを史上初めて女性のものにしたのである。

 顧みれば、1789年のフランス革命が、貴族・ブルジョワ階級が常用した乗馬用の半ズボン、キュロットパンツを廃絶し、市民階級(サン・キュロット)の普段着である長ズボン(パンタロン)を革命のシンボルとして華々しく歴史の舞台に登場させた。そうしてイヴ・サンローランが火を点じた「リヴ・ゴーシュ(左岸)革命」では、200年間にわたって男性が独占していたそのパンタロンを、はじめて女性に解放したのである。

 イヴ・サンローランという人は、天才ディオールとシャネルの後継者であっただけでなく、じつにフランス革命の輝かしい後継者でもあった。

   
♪白皙の美青年天に召されディオールとシャネルの左に座すかな 茫洋
  

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