bowyow megalomania theater vol.1
9月26日
あの時、桜が満開でした。
何百本という桜が満開でした。風が少しでも吹いてくると、吹雪のように花びらが僕の周りにはらはらと降りかかりました。
公園の土の上は、もう淡いピンクでいっぱいでした。
あれは確か僕が1歳半の春、横浜の弘明寺の公園の昼下がりのことでした。
僕はまだ歩けなくて、のそのそと公園の砂場の辺りをはいずり回っていました。はい回っていましたら、お父さんがいきなり憎々しい声で言ったのです。
「こらっ、立って歩け。立てねえのか、こら、このイモムシ野郎!」
僕は、イモムシではありません。歩けないから、こうやってイモムシのようにはいずり回っているのです。
突然どこかから歌が聞こえてきました。
――イモムシ、ゴーロゴロ、俵はドッコイショ、イモムシ、ゴーロゴロ、俵はドッコイショ……
お父さん、僕はイモムシではありません。
♪お母さん誕生日おめでとうと言うて次男横浜に去る 茫洋
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