照る日曇る日第281回
日経が毎年出しているこの本は、日経広告研究所が毎年開催している有料セミナー「広告の理論と実際の総合講座」の内容を1冊にまとめたものです。
最新の「2009年版」でも20名の著者が総論から各論までの20の講義を展開していますが、タイトルは変哲がなくても、常に業界の最新動向がどっさりと盛り込まれ、講師の大半がうろんなアカデミスト連中ではなくて、現場の最前線で活躍している実務家ぞろいであることが、凡百の類書と決定的に違うところです。
たとえばいま話題のソフトバンクの林浩司氏からは同社の経営戦略とシンクロした異色の宣伝広告キャンぺーンの舞台裏を垣間見ることができます。
真夏なのに冬景色のキャメロン・ディアスが登場したり白い犬が物を言うCMの背後には、その自由なクリエイティブを支持する現場担当者と、それを後押しする寛大な経営者が存在しているのでした。
しかもそれらのキャンペーンの前提として明確な理論と日常的なデータ管理がなされ、猛烈な速度で両者の修正と再構築が展開されているようです。名実ともにベストCMの評価を勝ち得た「白戸家の人々」に満足することなく、どんな名CMであっても陳腐化し、その効果は日ごとに失われる、と冷静に認識して、ライバルから奪ったビッグタレントによる一大キャンペーンを開始したこの会社の後生は、まことに畏るべきものがあります。
サッポロビールの寺坂史明氏からは、1本のテレビコマーシャルを断行するために辞表を胸に保守的な首脳陣と渡り合う武勇伝を聞くことができます。
どんな職業の、どんな仕事であっても、担当者が命を賭ける時はあるものです。
♪男一匹生きるも死ぬもこの時ぞこの時ぞ 茫洋
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