Tuesday, August 04, 2009

暑中お見舞い申し上げます

♪音楽千夜一夜第72回

拝啓H様

関東地方ではずいぶん早くから梅雨明けとなり、小生も家族ともども何回か海水浴を楽しんで参りましたが、その後は晴れたり降ったり霧がかかったりでどうもすっきりしないお天気です。そちらの夏はいかがでしょうか。きっと例年に比べて涼しいのでしょうね。

今年はいちだんときびしい景気後退の影響を受けて、学生諸君の就職活動は困難を極め、景気の上下動は仕方がないにしても、同じ4年生でも1年違えば天国と地獄というこの就職格差は、むごたらしい限りです。去年なら簡単に受かっていた会社からも今年は内定が出ないという過酷な状況は年を越えても続くでしょう。

また一番学業に身を入れるべき3年生の時点で、本格的な就職活動を開始する、あるいは開始せざるをえない状況は、学生にとっても、学校、企業にとっても大きな弊害をもたらしており、一刻も放置できない由々しき問題です。今度の選挙で民社党が政権を取ったらまっさきに解決すべき教育と社会の優先課題ではないでしょうか。

暑苦しい前置きはこれくらいにして、私たちのゆいいつのお楽しみであるクラシックCDの話をいたしましょう。2009年の上期で私の耳をもっとも喜ばせてくれたのはEMIから発売されたマリア・カラスの全スタジオ・レコーディング集70枚@150円の大セットでした。彼女の海賊版を含めたライヴ録音の大半を入手していた私は、「カラスの本領はやはりライヴだ、スタジオ録音なんて死んだ缶詰音楽だ」とバカにしていたのですが、1949年の初録音以降1969年の最後のテイクに至るまでそれこそ1枚1枚舐めるように聴いていくなかで、スタジオでも死力を尽くして音楽に精魂を傾けるデイーヴァの姿に熱い感銘を受けたのでした。そのなかでもやはり恩師トリオ・セラフィンの棒に厳しく導かれた歌唱がいま耳の奥底に懐かしく響いております。

同じオペラでは、廉価版の王者ソニー&BGMが出してくれたプッチーニの全作品を収めた@350円の20枚組セットが素晴らしかった。トゥーランドットやトスカ、ボエーム、蝶々夫人などの有名オペラはもちろんですが、「妖精ヴィッリ」「エドガール」などの初期の作品、「つばめ」や「外套」「修道女アンジェリカ」「ジャンニ・スキッキ」の3部作も見事な旋律美を堪能できます。全体を通じてロリン・マゼールの熱い指揮ぶりが印象に残っています。彼はバレンボイムと並んでやたらレパートリーが広い何でもやさんですが、プッチーニの初期作品とドビッシーの「ペリアスとメリザンド」を振らせたら今でも彼にかなう指揮者はいないと断言できます。

次はグラモフォンがライバルに負けじと出したヴェルディの8つの有名オペラ作品、リゴレット、トラビアータ、トロバトーレ、仮面舞踏会、ドン・カルロ、マクベス、シモン・ボッカネグラ、アイーダに加えてレクイエムもおまけに加えた21枚組の廉価版。1枚500円を切る安価というだけではなくて、そのすべてを私が世界最高と確信するスカラ座の合唱とオーケストラがお付き合いしているという豪華版です。

異論もあるかと思いますが、これまで私が聴いてきた世界の有名オケの中で、もっとも耳朶を震撼させられた楽団こそ「ラ・スカラ」なので、このベスト盤を逸するわけがありません。指揮はアバド、ガバツエーニ、クーベリック、サンチーニ、ヴォトーですが、やはりここでも老練セラフィンのタクトと若くして死んだエットーレ・バスティアーニの透明な美声を堪能できるのがうれぴい限りです。

To be continued

 
政権の交代求め民意動く世が変わるとはかくのごときものか 茫洋
理非にあらず曲直も問わず遮二無二人は旧きを倒す

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