茫洋物見遊山記第27回&鎌倉ちょっと不思議な物語第219回
鎌倉文学館の「文学散歩」に参加して、明治時代の詩人蒲原有明と昭和の文学者川端康成の旧居を見物しました。大塔宮からほど近くにあるこの旧居跡には現在も蒲原有明の遺族の方が住んでおられるそうです。
鎌倉のいいところは、表通りからちょっと入ればどこか山奥の侘び住まい風の雰囲気が楽しめることですが、鶯乱れ鳴く当地もちょっとそのような野趣を醸し出しておりました。なんでも林に誘われて東京から移った最初の住まいがこの旧有明邸であり、1946年(昭和21年)に三島由紀夫が自作を携えてはじめて鎌倉を訪問した場所もこの川端邸であったそうです。
わが国の詩壇に象徴詩という手法を薄田泣菫とともに確立したといわれるこの詩人を私は嫌いではありません。再読しようと思って書斎を探したのですが、有明の詩集と随筆集「夢は呼び交わす」はいつのまにか息子が勝手に持ち出してしまって手元にないので、文学館のテキストから「あまりりす」という詩を彼の「春鳥集」より孫引きして、全国の学友諸君に対する本日の連帯の御挨拶に代えたいと存じます。
『あまりりす』
おほどかに、
ひとりほほゑめる
わが戀の
花や、あまりりす。
あやしうも
貴に、すゐれんの
照りいづる
媚にも似もやらず、
おもひ屈し
すこしたゆたげにも
うつむける、
あはれ、あまりりす。
ちちははの京の土産に頂きし「ギリシア神話」はついに読まれず 茫洋
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