Sunday, November 19, 2006

鎌倉ちょっと不思議な物語 第八話

熊野神社付近に出没する謎の人物

 熊野神社は北条泰時が開鑿した朝比奈切通しの交通安全を祈願して紀州熊野から勧請されたという。

山腹に上下2つの社殿が築かれているが、最近下の本殿の左側に時々アマチュアの修験者が出没して無念無想の業に耽っている姿を見かける。

また本殿右側の突き当りには幻の名水を湛えた江戸時代からの井戸がある。

はるばる東京からやってきた名水マニアが汲んでいるようだが、30年前と比べてあまり清潔安全な水とはいえない。持ち帰るのは勝手だが、煮沸したほうが無難であろう。

さらにこの神社の麓付近には、サングラスをかけた青年考古学研究者?が地図を広げて待機しているので、ここらの歴史や遺跡や史跡について教えを乞うのも一興であろう。

この熊野神社は江戸時代に再興されたが、昭和初年から10年代にかけて地元の有力者によって門や狛犬などの寄進を受けた。

その多くが旧満州国の軍需産業で成功した人たちのようだが、日本帝国敗残のあと彼らは無事に母国に辿り着けたのだろうか? 

天国から地獄へ、一瞬の栄華から無限の奈落の底へ突き落とされた彼らの運命やいかに? 

戦争は断じていけないな、と、いつも思いながら、私は毎日のようにお気楽に散歩しているのである。

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