ある晴れた日に第75回
くねくねと走るキャメラはわが腸の白きポリープを探り当てたり
うねうねと突き進んだる内視鏡わが白きポリープをズキンとちょんぎる
下腹にズンとくる衝撃と共に断ち切られたるわが白きポリープ
目の前のモニター画面の真ん中で断ち切られたり10ミリのポリープ
次々にわれらの夢が消えてゆく大きな夢も小さな夢も
どこか夢を売っているところを知りませんか
昔のあんたはすごかったうれしがらせて泣かせて消えた
眼の前で大口開けて寝る男理由なく憎く思う電車の内かな
歯磨きの代わりに入歯接着剤で磨きたる息子の口を急いで漱ぐ
厳めしき教授の顔をよく見れば丹波の洟垂れ小僧なり
久しぶりにどんべえ食べたら吐き気を覚えたよ
朝日差す歩道の端に横たわる灰色の猫はびくともついに動かず
図書館で古今著門集借りた老人の自転車は錆びていた
恵比寿駅午後2時40分空っぽのNEXが通過する
町内の怪しき者は通報せよとパトカーが喚いている恐るべき警察国家ニッポン
はまぐりの実を捨てたなと息子を怒る
腹立ちて息子を怒鳴りつけたれば1日パソコン動かざりけり
母上のグリンピースの混ぜご飯妻が作りて食べさせてくれたり
母上の大好物のグレープジュース食わずになりて久しきことなり
春になったら由良川へ行こう
岸辺では善チャンがサクラマスを釣っているだろう
ガンクロの娘美白になりて娘と歩いてる
哀れまた美女に食われし文士かな
歌っても歌わなくてもいずれは沈黙
♪卯の月は死に物狂いで生き抜けり 茫洋
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